この記事は、東京でタクシードライバーになろうか迷っている未経験の方向けです。先に結論を書きます。東京のタクシー運転者の平均年収は 570 万円で全国 1 位、その上に月収 100 万円を経験した層が確かにいて、年収 1,000 万円は上位数 % の世界。そして平均と上位の差を作っているのは、経験年数ではなく「どこで・いつ走るか」です。 なお 570 万円は 2026 年 4 月の運賃改定より前の統計です。数字はすべて 2026 年 9 月時点で編集部が元資料を開いて確認したものです。
平均は 570 万円で全国 1 位。ただし労働時間は月 29 時間長い
全国ハイヤー・タクシー連合会が、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和 7 年)から都道府県別に取りまとめた数字です。
| タクシー運転者 | 全産業労働者 | 差 | |
|---|---|---|---|
| 東京都 年間推計額 | 570 万円 | 678 万円 | −108 万円 |
| 全国 年間推計額 | 451 万円 | 546 万円 | −95 万円 |
| 東京都 月間労働時間 | 198 時間 | 169 時間 | +29 時間 |
神奈川 449 万円、千葉 449 万円、埼玉 413 万円。東京だけが 100 万円以上抜けています。理由は単純で、羽田・東京駅・新宿といったターミナルに客が集まり、乗せる機会そのものが多いから。 一方で東京の全産業平均 678 万円には届きません。月の労働時間も 29 時間長い。ここまでが「平均」の話でした。
2026 年 4 月に運賃が 10.14% 上がった。570 万円はその前の数字
2026 年 4 月 20 日、東京 23 区と武蔵野市・三鷹市(特別区・武三交通圏)でタクシー運賃が改定されました。国際自動車の告知で改定後の額を確認しています。
| 改定前 | 改定後 | |
|---|---|---|
| 初乗り | 1.096 km まで 500 円 | 1 km まで 500 円 |
| 加算 | 255 m ごとに 100 円 | 232 m ごとに 100 円 |
| 時間加算(時速 10 km 以下) | 95 秒ごとに 100 円 | 85 秒ごとに 100 円 |
| 深夜早朝割増 | 22 時〜翌 5 時 2 割増 | 変更なし |
初乗りの 500 円は据え置きですが、その 500 円で走れる距離が 96 メートル短くなりました。加算も 23 メートル早く回ります。報道された改定率は 10.14% です。渋滞で止まっている時間の加算も 10 秒早くなったので、混む時間帯ほど効きます。 ここまで書いてきた 570 万円は令和 7 年の調査で、この改定より前の数字です。同じ距離を走れば売上は上がる。ただし値上げで客が減れば相殺されます。実際にどう出たかは、改定後 1 年分の統計が出るまで分かりません。
月収 100 万円の層は実在する。ただし「毎月」ではない
2026 年 1 月から 2 月に、全国の現役タクシー運転手 177 名へ行われたアンケートがあります。東京都の回答者の 61% が「月収 100 万円に到達した経験がある」と答え、約 49% が「年収 1,000 万円は狙える職業だ」と認識していました。 同じ調査は、逆の数字も出しています。全国では約 70% が現在の月収 40 万円以下。そして「いま月収 100 万円を超えている」と答えた東京の回答者は 2 名、約 5% でした。
読み方はこうなります。東京では、月 100 万円は「一度は届く」水準。でも「毎月続ける」水準ではない。年収 1,000 万円は存在するが上位数 % の世界で、平均の 2 倍近い売上を 12 か月続ける計算になります。 自動車メディアには「東京なら 1,000 万円プレイヤーも珍しくない」と書いた記事もありました。編集部が読んだ限り、それは記者の見解で、統計の裏付けは示されていません。夢は本物です。確率は正直に見るべきです。
会社が公表している「上の層」の数字
- 大和自動車交通は未経験者採用ページで「1 年目から年収 550 万円以上」「最低でも 470 万円程で、600 万円を超える者が半数以上」と書いています。会社自身の主張です。
- 日本交通は求人媒体で「年収 700 万円以上多数」を掲げ、給与保証は 3 か月 40 万円、その後 9 か月 35 万円と明記。
- 177 名調査では、配車アプリの普及後に収入増を実感した人が約 58%、インバウンド増で稼げるようになったと答えた人が 57%。2020 年から 2025 年で全国平均が 100 万円以上上がった背景です。
会社の数字は採用のための数字です。ただ、日本交通も大和自動車交通も特別区・武三地区(東京 23 区と武蔵野市・三鷹市)の大手で、この水準の人が実際にいなければ書けない内容でもあります。
年収 1,000 万円に必要な売上を、1 乗務あたりに割ってみる
歩合率を 60% と置きます(「業界最高水準」を掲げる日本交通の値として求人媒体に 62% とあります。二次情報です)。年収 1,000 万円には年間売上およそ 1,670 万円、月 139 万円が要ります。隔日勤務で月 12 乗務なら、1 乗務あたり約 11.6 万円。 東京の平均的な 1 乗務の売上を仮に 6〜7 万円とすると、その 1.7 倍前後を毎回出し続ける計算です。同じ時間、同じ車で 1.7 倍。差が生まれる場所は一つしかありません。客のいる場所と時間に、先にいるかどうか。
年齢別に見ると、若いほど有利で、60 代以降は下がりにくい
| 年齢 | タクシー運転者(全国) | 全産業 | 差 |
|---|---|---|---|
| 20〜24 歳 | 483 万円 | 361 万円 | +122 万円 |
| 25〜29 歳 | 483 万円 | 448 万円 | +35 万円 |
| 30〜34 歳 | 518 万円 | 507 万円 | +11 万円 |
| 35〜39 歳 | 492 万円 | 557 万円 | −65 万円 |
| 40〜44 歳 | 499 万円 | 595 万円 | −96 万円 |
| 45〜49 歳 | 521 万円 | 614 万円 | −92 万円 |
| 50〜54 歳 | 494 万円 | 634 万円 | −140 万円 |
| 55〜59 歳 | 481 万円 | 641 万円 | −160 万円 |
| 60〜64 歳 | 440 万円 | 506 万円 | −66 万円 |
| 65〜69 歳 | 379 万円 | 402 万円 | −23 万円 |
| 70〜 歳 | 348 万円 | 353 万円 | −5 万円 |
20〜34 歳ではタクシーの方が全産業より高く、20 代前半では 120 万円以上の差。35 歳を過ぎると全産業が年功で上がるため差が開き、55〜59 歳で最大の −160 万円になります。 60 歳を過ぎると逆転が始まります。全産業側が定年再雇用で下がるからで、65 歳以上ではタクシーの方が高い。歩合制には年功がない代わりに、1 年目から 400 万円台に乗り、60 代でも落ちにくい。東京タクシーセンターの登録者の平均年齢が 50 代後半なのは、この形と無関係ではありません。
差はどこで生まれるか。経験年数ではない
経験 0 年で 371 万円、1〜4 年で 418 万円、5〜9 年で 407 万円(全国)。積み上がりません。5 年目で頭打ち。 同じ歩合率なら、売上は「どこで・いつ・どれだけ乗せたか」だけで決まります。編集部が東京都内の路上情報 2 万件以上を約 1 年分集計したところ、需要が立つ場所と時間は月をまたいでもほぼ動いていませんでした。新宿駅、東京駅、品川駅、千代田区。上位の顔ぶれは 1 年間変わっていません。年功でも学歴でもなく走り方で差がつくことの意味は、応募に学歴の欄はないに書きました。
上の層に行く人が持っている「土地勘」の大枝は、始める前に知ることができます。細かい枝葉は現場で覚えるとしても、大枝を知って始めるかどうかで、給与保証が切れた 2 年目の年収が変わる。私たちはそう見ています。稼げる場所と時間は決まっているで、集計の中身を見てください。



